2021年 01月 24日
Ne Me Quitte Pas(行かないで)Jacque Brel |
この曲は1959年、ブレル30歳の時発表された作品で「ブレルの究極の古典」と評され、男性から女性まで多くの歌手によってカバーされています。
バルバラも歌っています。
独特のリズム、畳みかけるような懇願の言葉 ”Ne Me Quitte Pas"(「行かないで!」)、ほとばしる情熱、鮮烈な赤の色彩……
なんとも強烈な印象の歌ですね。
【物語】
行かないで!
忘れよう!
過ぎ去った時、誤解の時を
「何故?」の一撃で
「幸せの心」は逃げてしまう
行かないで 行かないで 行かないで
君に贈ろう!
雨の降らない国で採れた雨の真珠を
愛が王様、君が女王様
愛によって治められる国を
僕は建てよう!
行かないで!
どうか聞いて欲しい
一度は冷え切った恋人たちが
再び燃え上がったという話を
君に会うことができず死んでいった
王の物語を
ひとはしばしば見るではないか!
長い間死んでいたはずの火山が
再び噴火するのを!
焼き払われた土地がみどりの農地よりも
むしろ多くの小麦を実らせることを!
夕暮れ空がやがて燃え上がり
赤と黒が混じり合うのを!
行かないで!
僕は涙も枯れ果て話す気力も失った
ただ君が踊り、歌い、笑うのを
隠れて見ていよう
君の影の影に
君の手の影に
君の犬の影に
僕はなろう
だが 行かないで、行かないで、行かないで……
1966年のインタビューでこの曲についてブレルは「男性の臆病さへ向けての讃美」と語っています。
実はこの曲の背景にある事実として、彼がデビュー以前からの恋人に対して、不実であったこと、
すなわち彼女の妊娠に対して認知を拒み、そのことのために彼女は彼の元を去ったということが
あったようなのです。そのあとでこの曲が作られたと言われています。
自分の身勝手を棚に上げて、あたかも捨てられたあわれな男を演じるという実にに理解に苦しむ話ですが、
男の身勝手と傲慢、それと未練を捨てきれないストーカーのごとき卑小さというのは裏腹のものなのか、
とこのエピソードから思わせられています。
それにしても ブレルのほとばしるようなパッション、豊かな文学的表現には心揺さぶられます。
特に夜空に鮮烈に燃え上がる”赤”に強烈な印象を受けます。この”赤”は日本人の情念を表す
血のような”赤”とは違って、赤ワインの”赤”色を連想させられるような気がしますがどうでしょう?
by kanaikazuko
| 2021-01-24 14:55
| シャンソン
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